Soul Music,Lovers O

山田詠美の『Soul Music,Lovers Only』(幻冬舎)を読んだので、それに関することを。
正直この小説はタイトルで買った。そもそも私は山田詠美が好きじゃない。やたらとでてくる性描写、曲がった人生観が嫌なのだ。それに、どうしても私はそこになにか作為的なものを感じてしまう。社会にうまく溶け込めないというか、少し孤立し、屈折した、またはそれを望む若者たちの共鳴を意図的にねらっているような気がしてしまう。この小説ももちろんその系列をふんでいる。ブラックミュージックの流れるフロアで織り成される8つの短い物語はどれも剥き出しの性をモチーフにしている。一般的に、誰もがしているはずなのに、誰もがしていないかのように振舞うセックス。むしろ人々はなぜかセックスに対して否定的なようにさえ思う。そんなセックスがここでは、とても無垢に、また肯定的に人間のしぐさのひとつとして描かれている。体を重ねることでしか伝えられない言葉、癒せない悲しみ。また、言葉、理性を超えたプリミティブな性への好奇心。どの性もまるで少年のように純粋で、切ない。セックスとはもっとも素直な愛情表現なのかもしれないと感じさせられる。山田詠美ファンならきっとこういうの好きなのだろう。