ヒゲよ、さらば

トンネルと抜けると、
そこは大工だった…


思春期は遅いが人より多少ませていたぼく、
美容院に行き始めたのは高1ぐらいからだっただろうか。
理由は簡単、
床屋に行くと待ったなしで刈り上げられるからだ。
だから美容院に通うようになって早7年、
その行為は日常に変わってゆき、
いつのまにか床屋の記憶は薄れていっていた。


そして今回、7年ぶりに床屋にいくことになった。
ぼくは今、レストランのオーナーになるべく、上級の接客を学ぶため、
ホテルまたはブライダルでバイトをしたいと考えている。
そのためタブーである4年来の友人のおヒゲとはお別れしなければならない。
浪人以来ぼくのアイデンティティーとも化していた
ヒゲと別れるのは、決して簡単なことではなかったが、
背に腹はかえられない。
いっそのこと床屋でひと思いにやってもらおう。
その思いでぼくは床屋に行った。


だが、これがすべての元凶だった。


二段落目に戻ろう。
ぼくがなぜ床屋に行かないか。
理由は簡単、
床屋に行くと待ったなしで刈り上げられるからだ。
ぼくがなぜ床屋に行かないか。
理由は簡単、
床屋に行くと待ったなしで刈り上げられるからだ。


理・美容院というジャンルではあっても
理(容院)という言葉がかかっている以上
床屋には相違ない。


ぼくは床屋に行った。
故に刈り上げられた。
理由は簡単、
床屋に行くと待ったなしで刈り上げられるからだ。


我行く。故に我刈りあがる。
デカルトですか?方法序説ですか?


違います。


大工です。


今のぼくはまるで大工のようだ。
いや比喩じゃない、大工そのものだ。
度の強い色眼鏡を掛けても、高倉健
みたいな大工だ。
結局、いつも大工だ。
オオエじゃない、大工だ。




嗚呼、ヒゲよ、さらば。



帽子さん、こんにちわ。