生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

日頃、身につまされている研究の裏話は冗長だとしても、デコとレコの繰り返しによる「動的平衡」というテーゼをもとに主張される、これまでの静的で機械論的な生物感に対する「動的な生物」という帰結はおもしろい。

生命とは、テレビのような機械ではない。このたとえ自体があまりにも大きな錯誤なのだ。[…]さまざまな分子、すなわち生命現象をつかさどるミクロなジグソーピースは、ある特定の場所に、特定のタイミングを見計らって作り出される。そこでは新たに作り出されたピースと、それまでに作りだされていたピースとの間に、形の相補性に基づいた相互作用が生まれる。その相互作用は常に離合と集散を繰り返しつつネットワークを広げ、動的な平衡状態を導き出す。一定の動的平衡状態が完成すると、そのことがシグナルとなって次の動的平衡状態へのステージが開始される。
                             〔上掲書、262-263頁〕

途中、(1995年に死んだのだからありえないのだけど)ドゥルーズもこの本を読んでんじゃないか?と思うほど、彼の理論と動的平衡のテーゼは類似する。