これがニーチェだ (講談社現代新書)

これがニーチェだ (講談社現代新書)

ニーチェの思想を三つの空間にわけ、その「正直」な空間開破の力に彼の思想の特質をよみこむ、ニーチェ思想の動的(永劫回帰的?)解釈。「生成の無垢」、「こども」など、後期思想に関する読みはとくに秀逸。
「神は死んだ!」など、あれほど激しいニーチェ思想をあつかって以下のようなことはなかなか言えない。

ニーチェ的認識は、それを語ることによって、その否定が示されてしまう、といった側面を持つ。しかしおそらく、実質的にニーチェと同じような、あるいは類似した認識を持ちながら、それを語らずに、ただそれを生きて、死んでいった人々も、いたにちがいない。だから世界は、語られたもの、書かれたものの累積によって現に知られているよりも、じつははるかに健康で、はるかに高貴なものかもしれない。ニーチェの思索と書き残したものは、そういう可能性があることを、われわれに教えてくれる。
                         〔上掲書、217頁〕