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- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自然といわず生命といわず、あらゆるところに自分の原理を浸透させていこうとする押しつけがましさが、キリスト教と資本主義と科学主義という、西欧の生んだグローバリズムの三つの武器には共通している。このうちの資本主義と科学主義とを受け入れてきた日本人は、それによってずいぶん得をした反面、心の内部の深いところまでその原理の侵入を許してしまった結果、いまやおおいに苦しめられている。[…]ぼくは夢想する。双系原理によって立ち、都心部にあっても、自分のまわりをとりかこむ騒音にすこしもそまらない森の奥で、おだやかな森番のようにして生きる天皇が、ある日つぎのように世界に向かって発信するのである。「わたしたちの日本文明は、キノコのように粘菌のように、グローバル文明の造りだすものを分解し、自然に戻していくことをめざしている、多小風変わりな文明です、そしてわたしはそういう国民の意志の象徴なのです。」
〔上掲書、237-239頁〕
もちろん「思想」っぽく読まずとも、「東京の散歩道」として読んで十分おもしろい。