走れメルス』 野田地図第10回公演  作・演出 野田秀樹 出演 深津絵里 中村勘太郎 小西真奈美 河原雅彦 古田新太 野田秀樹ほか


野田秀樹の作品は初めて観たけど、コレっほんっとに良いです。もう、すぐに私も野田地図ファンの一員になってしまった。なんといっても、その魅力は舞台にしかない「生」の感覚にある。俳優が舞台上をあっちこっちと動きまわること、動きまわること。観ているこっちが動悸息切れ。特に、古田新太野田秀樹のからみは最高、笑えます。また、深津絵里の「リンゴのシーン」のアドリブも「ああ、舞台ってこういうもんだなあ」とつくづく関心させられてしまう。基本的には「走れ」というタイトルそのままの息つく間もないドタバタな舞台展開(叶姉妹からアニマル浜口まででてくる!?)だが、「完璧な不完璧」とでもいうのだろうか。絶妙です。ただ、そのストーリーは難解。太宰の「走れメロス」の現代版かと思いきや、そんなことはありません。崩壊した集積回路工場。ひとつの海によって隔てられたあっちとこっちの世界。羅列される意味の繋がりのない言葉。「主が死ぬと部下にするの?メルス」。下着泥棒。火事。かぶとぬし。私は、膨大な情報に埋もれ、虚像と実像がごっちゃになってしまった現代の神話社会を描いていると解釈したんですが、実際のところは分かりません。まあ、本人曰く「分からないものは想像しろ」ということだそうです。