『ハネムーン』中公文庫 吉本ばなな(著)1997

やっぱりばななは良いです。文章はきれいですし、話も読みやすいです。それに、ばななを読むといつも感じるのが、感情表現がとても丁寧に書かれているということです。その描写に使う言葉のひとつひとつに愛情がこもっているというんでしょうか、どれもとても暖かな印象を受けます。この話はひとつ、「死」というものをテーマ扱っているんですが、それでも、この作品から伝わってくるのは、「死」の持つ悲壮感ではなく、「死」への親しみです。私たちはどんなかたちであれ、みんな「死」を迎えます。たしかに、人生は大変で辛く悲しくせつなく、時には死にたくなることもあるかもしれない。でも、それでも生きることは、美しくて楽しくて、愛しいものなんだ。そう、この本は語っているような気がします。また、表紙など、あちこちに挿入されたMAYA MAXXのヘタだけど暖かい不思議な絵もこの作品の暖かさに花をそえてくれます。