ピンチとチャンスがピチピチと入り乱れ

『ペテン師と詐欺師』
脚本:宮田慶子 脚本:ジェフリー・レイン 出演:鹿賀丈史市村正親奥菜恵愛華みれ/高田聖子/鶴見辰吾

ブロードウェイで、などはどうでもいい。小学生とか小さいころに観たものの記憶もすべて含めて、このミュージカルはいまのところわたしの生涯ナンバーワン・ミュージカルだ。
ちょと思うだけで演劇ははじめからふたつの「欠陥」を含んでいる。ひとつは、お芝居である、ということ。もうひとつは、舞台である、ということ。つまり、演劇である以上は、絶対に演じられなければならないため、どんな匠がやろうとも(映画に比べてもとくに)「お芝居」の域をでない。また舞台であるために、場面転換のときに、都合上どうしても小道具を撤去できないときがでてきてしまう。それに加えてこの舞台では問題がもうひとつ。若そうな役柄に比べて、鹿賀丈史(56)、市村正親(57)の年齢だ。
しかし、ストーリーのピンチをチャンスを変える詐欺師とペテン師の攻防同様、このミュージカルはすべてその短所を長所に変えている。まず「お芝居」である=演じられている、ということに関しては、設定上、主人公が詐欺師とペテン師という何者かに「扮装」するものの二重構造なのだからもうすでに宙ぶらりだ(そのうえ、異化効果的なことも)。そして、小道具と年齢に関しては、これが鹿賀、市村、両ベテランの力量なのだろうか。転換後、舞台上に残ってしまった小道具に座って「いけね、これじゃなかった」などとおどける。かなり激しいダンスのあとには必要以上にぜーぜー息をする。などなど(多々)して「欠陥」をすべて笑いに変えてしまっていた。おそるべし。おもしろし。また、二人の間(なんとかもっとこの言葉を具体的に表す表現はないものか)や身のこなしなどは素人目にも抜群の安定感があった。おそるべし。おもしろし。
ただ奥菜恵はちょっとと言わず歌がヘタっぴだったぞ☆