視覚的人間―映画のドラマツルギー (岩波文庫 青 557-1)

視覚的人間―映画のドラマツルギー (岩波文庫 青 557-1)

映画。バラージュ。視覚的(言語的)無意識。この『視覚的人間』は、一冊すべて「雰囲気」という、語らない語りの身振りに捧げられているのではないか?
たくさんあるおもしろい記述のひとつは、(クローズ・アップによる)「相貌」が「子供」(!)とリンクしていることだ。

子供は相貌をよく知っている。子供はまだ、事物をもっぱら気にもとめないで用いる実用品や道具や目的のための手段とはみなさないから。子供はどのような事物をも自らの魂と自らの顔を持つ自律的な生き物として眺める。
       〔バラージュ『視覚的人間』佐々木基一ほか訳、101-102頁〕

ベンヤミンが「映画俳優」に見ていたものを、バラージュは(無機質的と言われる)「カメラ的クローズアップの視線」に見ていたのだとしたら、すごい面白い。まだ想像の域だけれど…。