素晴らしい世界 (1) (サンデーGXコミックス)

素晴らしい世界 (1) (サンデーGXコミックス)

素晴らしい世界 2 (2) (サンデーGXコミックス)

素晴らしい世界 2 (2) (サンデーGXコミックス)

浅野いにお。現時点でコンプリート。このマンガは短編集であるが、各物語間をつなぐ、挿入画から判断して、物語はすべてひとつの街(世界)を舞台に展開されている。実際に、「生きていればきっと、いつかどこかでいいことがある。」かどうかは知らないが、このマンガに見えるのは、世界(自然)と人間に関するのひとつのパラドックス
一般的に、「自然と共生する」というと、近代的な生活を捨てたスローライフが代表される。だが、その生活も、ファーストかスローかの違いはあれども、結局は捨ててきた社会生活と同様、自然生活に身を捧げることに変わりはない。どんなにスローライフであろうとも、強引な社会の変化と同様、無慈悲な自然の変化に従うしかないからだ。
だが、この『素晴らしき世界』の「街(自然)」は違う。登場人物たちは、どれも日常から「転落」する。友達だったものは「いじめ」になり、彼女だったものは元カノになり、バンドマンだったものはサラリーマンになり、青春だったものは、平凡になる。生活は、自分に目もくれない周囲の変化にもみくしゃにされ、しわしわにされる。だが、だからこそ、何のへんてつもないのっぺりした変わらない街(自然)が、強烈な色彩(強度、郷土?)を帯びて立ちあらわれてくる。日々の生活が(いわゆる)現実の冷たい風に吹き飛ばされ、しわしわだからこそ、転落しても(手を返したように変わる周囲とは違う)昨日と同じ河原の風景が、昇る朝日と沈む夕日が、変わらない「自然」が、「素晴らしい世界」が文字通りにも光る(前景化する)。
そんな、エコ・ロジー