アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトウ監督。冒頭は説明くさかったが、一本の「銃」によりズレた日常の連鎖から絶えず透かされるディスコミュニケーションと信頼の問題系の中で輝く音楽、ダンス、子どもの悲しさと美しさ。マクルーハンの「地球村」に対するアンチテーゼのような強烈な「細部」(/周縁)が、まぎれもないフィクションでありながら、リアリティを持つのは、そこに血と暴「力」と大地の「顔」があるからだろう。
でも、すこし(「良い」映画って形容したくなるほど)まじめ。
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ウォン・カーウァイ監督。時間間隔がとにかく変で、物語の時制はもちろん、オフ・モノローグがいったいいつの時点から振り返って語っているのかよく分からない上に、モノクロの使用も回想シーンにおさまりきらない。こういった様相を、ストーリーの文脈を借りるならば、「思い出の地層」とでも言えるだろうか。
パンツ姿でじゃれあう男たちのせつない背中に。