松ヶ根乱射事件 [DVD]

松ヶ根乱射事件 [DVD]

山下敦弘監督。ほとんどカメラが動かないべたっとした構図は相変わらずだが、初期の『どんてん生活』『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』のようなヘンテコでまぬけで無・意味なカットの連なりは(残念なことに)ない。代わりにこの映画は「空振りのカタストロフ」で満ちている。
決してつながらないディスコミュニケーションの重力に押し潰され、断片化された人々は、嘔吐し、叫び、泣き、空砲をぶっ放すことしかできない。そうした「どうしようもなさ」の渦の中で重ね合わせられる兄弟の「足のシーン」の美しさ、せつなさ。
結局、最後まで問題を未・解決におくことによって、『シガテラ』に似て、「出口なし」の様相に対し、ナルシシズム的に「なんとかなるさソング」を歌うのではなく、空虚な放射能を全身に浴びつつ、それでも生きていくということ。
この映画を尊敬する。