アルフォンソ・キュアロン監督。9.11以後の戦争表象としてよく話題にあがるこの映画だが、アガンベンの「ホモ・サケルプロジェクト」よろしく、たしかにその「例外状態」が内在化した風景は見ていてヘコむほどすさまじい。
たとえば、冒頭のカフェにおける、中盤のジュリアン・ムーアにおける、テロのシークエンス。まさに「嘔吐」をもよおすほどの映像の身体感がある。
「最新のCG技術と伝統的撮影法」が融合した(現実に機械が織り込まれた)有名な革命的「長回し」のシーンによる効果は、ゴダールなどフィルム派をただの遺跡にする、未来の映画を予見させる。