合葬 (ちくま文庫)

合葬 (ちくま文庫)

数ある杉浦日向子作品の中で一番好き。ひたすら地べた目線で描かれた青年たちの幕末は、下記のような地つづきの「江戸」を感じさせる。

慶応四年七月十七日
新政府は江戸の名称を東京とし
ついで九月八日年号を明治と改める
当時反骨の江戸っ子はこんな落首を
詠んだ


上方のぜいろく共がやって来て
 とんきょう(東京)などと江戸をなしけり
  うえからは明治だなどと云ふけれど
   治明(オサメルメイ)と下からは詠む
                       〔同書、178頁〕

その他、黒の描写が色っぽい。

百物語 (新潮文庫)

百物語 (新潮文庫)

九十九の物語は、起承転結を持たず、ただ「奇譚の様」をとつとつと語られるだけであり、それがなにか「日本的なもの」を感じさせる。