後日談

「ともあれ侍として死ぬこともかなわずモハヤ家も国もない一介の無宿ですから生き恥も ここに極まったりといった処です。
母は情けないといって泣いたモンですが私は何やらサバサバした心持ちでありました。
床に伏している間には娘の縁談は親同志の取決めによるものだということも知れました。
そうすると倉石か私かが娘の胸中にあった筈ですが 今更モウ川向うの火事です。
父の自慢である庭先の藤棚が咲きそろったのをはなむけに
私は城下を落ちました。」(50-51)

ゑひもせす (ちくま文庫)

ゑひもせす (ちくま文庫)

とにかくここ数日いろいろあった。いまはなべて風流。通りすぎていく路はまた通っていった路でもあって、それは。