イチロー

企業の面接でもいい、「自分自身をアピールしてください」と尋ねられた時、私はなんと答えるだろう。私はどうやって自分自身を証明するだろう。それが、有名野球部の4番バッターなら話は簡単である。もう有名野球部の4番ということ自体が証明となるからだ。そこには、どんな困難にも耐え、ずっと野球を続けてきたという忍耐力。また、血のにじむような練習をしてきたという努力。そしてそれが報われたという才能が保証されている。アピールするということは他人にはない自分の良さを提示することである。その意味で、ミスキャンパスや〜賞受賞者、TOEIC満点なども同じことが言える。彼らの差別化はなにかデカイことをしたというその肩書きだけでじゅうぶん成功している。だが、それ以外の人間はどうやって差別化を測るのか。とてもやさしい人がいるとする。その人はどうやってそのやさしさを証明するのか。とてもまじめな人がいる。その人はどうやってそのまじめさを証明するのか。どうやって他の人よりも自分の方がやさしい、まじめだと証明するのだろうか。また、それをどうやって一目で相手に分からせるのであろうか。そうなると自分の証明とは行動の証明。肩書きの証明ということになる。「いやっ!人間の尺度はそんなもんじゃない」。そう思う人もいるだろう。私もその1人である。人の良さとは肩書きのような「入れもの」ではない。また、「入れ物」をアピールする人ほど形骸な人間だと感じる。しかし、人は多くの場合「入れ物」でしか人を判断できないことも事実だと思う。