プルースト/写真

プルースト/写真

メディア。プルーストの作品と思考を「写真」の観点から。第三章「プルーストの思考への写真の影響」。明示的には「写真の影響」にとどめているが、内容的にはむしろ、プルーストの「写真思考」(「非=人間的ヴィジョン」)といっていい。
理性(または感情=人間?)とリアリティ(現実)の喪失/メディアとリアリティの救済。無意志的想起。「時間の老い」(更新されていく時間)への哀惜。
それにしても、ベンヤミンドゥルーズ、クラカウアーといい、なぜこうまでして、彼らは「非人間的なもの」を志向(思考)しようとするのか?
また、プルースト本人の著作は未読だが、もしかしたら彼の身ぶりとは『おやすみプンプン』における浅野いにおの身ぶりに似ているのではなかろうか?
心霊写真 不思議をめぐる事件史 (宝島社文庫)

心霊写真 不思議をめぐる事件史 (宝島社文庫)

宝島社だがべつにオカルト本ではなく、しっかりと文献学的な歴史記述の手法に基づく「日本心霊写真史(の叩き台としての鳥瞰図)」。心霊写真の観点からまじめに世相を切っていて少し文字通りおもしろい。ただ、現代における心霊写真の投稿→鑑定→供養のシステムに、かつてのような物語(レトリック)の欠如、それに伴う若者の会話の貧困化と写真撮影による相互理解(「写真性失語症候群」)を接続するのはちとむりくり過ぎる。
過去の意図的(遊戯的)にねつ造されたトリック型心霊写真に対し、現代のなにか偶然に霊のようにみえる形を探す探索型心霊写真を「心霊写真のポストモダン」とするのは、ウケる。